2001年1月号 10ページ・11ページ
店舗紹介  ビアン・シュール南船場店
基本的な部分を変えていかないとリテイル生き残ることは難しい
天王寺で地元密着型のベーカリーとして有名なビアン・シュール(大阪市阿倍野区)が、
平成11年10月に南船場店を、続いて11月には池田市にパティスリーをオープンさせた。
長引く不況の中で、大手・中小とも青息吐息の状態のところが多い中、
個人オーナー(谷口晋吾氏、35歳)の店で新規出店を果たし、順調に売り上げを伸ばしている。
もちろんベースとなる天王寺の阿倍野店も売り上げを伸ばし、現在、月商で850万円を維持している。
 その要因はどこにあるのか。オーナーの谷口氏に問いかけても、「長い間店をやっていれば
客が多少増えていくのは当然でしょう。特に売上が伸びた要因は思い当たりません」という返答だった。
しかし、話を聞いていく内に、二つの大きなポイントに気付かされた。
谷口氏にとっては、べ一カリーの店を運営する時の基本的な考え方だから、特に目新しい要素では
ないということなのかも知れないが、一般の店舗運営からすれば、全く逆転の発想とも言える
要素だった。
 一つは『商品の原価率を上げられるところまで上げる』ことなのだ。
谷口氏曰く「出来るだけいい材料を使って、美味しいパンを大勢の人に食べていただきたい。
その為には、原価率は当然上がっていくものなのです」。
同店の原材料は、百貨店のベーがノーと比べても決して劣ることはない。
しかし、パンの売値は三割安いのだ。当然、原価率は悪くなり、35〜38%になっているそうだが、
これでも充分店は運営していけているし、『一人のお寄様を大事にする』ということが谷口氏の
総ての原点になっているからだ。各店ともパン・ケーキはオールスクラッチで、
フイリング類も餡以外は総てそれぞれの店で作っている。
 もう−一つの要因は『人件費率を上げる』ということだ。谷口氏の基本的な考え方は
「職人が金を取れるような店をしたい」ということだそうだ。
谷口氏は「日本のべ一カリーは職人に対する地位が低すぎる。
20歳代の一番良いときに、とてもきつい仕事を強いて、少し店の状態が悪くなると、
要らないというようなことも多い。もっと職人の地位が上がるようにしたいというのが、私が店を
する大きな理由です」と話し、こうもつけ加えた。
「但し、うちの店ではパン職人は要りません。ただ自分が独りよがりに作って満足しているだけの
職人ではなく、パン屋として、お客を意識して、お客が喜んでくれるパンを作り提供する人を
大事にしたいと思っています」
 この考え方に沿って、谷口氏は昨年の5月からビアン・シュール全店で新しい給与システムを実施した。
ビアン・シュールでは一カ月の生産表を作つているが、社員全員がそれを見ることが
出来るし、今月の利益も総てオープンになっている。そして、その総利益の3分の1を算出して、
半年に一回、社員全員に均等に配分しているのだ。谷口氏は「まだ、一回目を配分しただけですが、
従業員全員がオーナーの意識になれるのですから、この効果は大変大きいと思います」と言う。
 ビアン・シュールももちろん基本給があり、それぞれの能力に応じて毎年上がって行くが、
基本給だけなら上がったなりに慣れてしまって、意識が長く続かない。
それで、この利益均等配分を実施したのだという。ビアン・シュールの各店には
店長やマネージャーはいない。それぞれが自分の持ち場でそれぞれの仕事を分担してこなしている。
伝票整理など、どうしてもやらなければならない事務作業などは全員が当番制でやっているそうだ。
何でも自分達で責任を持ってやることで、無駄な間接経費を出来るだけ抑えて、それを原材料費と
人件費に回しているのだ。
 谷口氏は「基本的なところを変えて行かないと、来年はもっと悪くなる。パンーつだけなら誰でも
作れるし、昼のパンだけならCVSに食われるのは当たり前。これからは一人の客を本当に大事に
しているかどうかが基本になります」と話し、前述の基本的な二つの柱をこれからも崩さないように
したいと語っていた。

【ビアン・シュール阿倍野店】
大阪市阿倍野区阿倍野筋2−4−44 
電話06−6624−2294 
営業時間=8時〜20時30分

【ビアン・シュール南船場店】
 レストラン「ソルビバ」と同じ建物にあり、若いOL層を中心に人気を集めている。
日商は22〜25万円。
大阪市中央区南船場4−12−20
電話06−6253−0176 営業時間=8時〜20時30分

【パティスリー】
 阪急池田駅のすぐ近くで、6榊坪の敷地のある旧家を利用して、
レストランビアン・シュール(別経営)とパティスリーを展開。
パティスリーの日商は平日25万円、土・日は35万円。
昨年のクリスマスには220万円を販売した。
池日市満寿美町2−12
電話0727−50−6615 営業時間=10時〜21時
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